私になる

背伸びをしたって届かないものばかり目に入るけれど、私も誰かにとって届かない存在なのかもしれない。そうやって魂のかたちを保っていけるのなら、幸せになれるだろうか。優しい人に会うと自分も優しい人だと錯覚してしまうけれど、私は自分も他人も傷つけることで生きているってこと、忘れちゃだめだよ。甘くて白い煙に巻かれて誤魔化したって、袖についた染みは消えない。ずっと消えない。

この余生をどうやって過ごそうか。紙のざらつきを指先で確かめながら、考えているだけで消費されていくモラトリアム。狭い狭い世界の中で、一筋の光を探している。でも、きっと、一筋じゃだめなんだ。光の束が必要なんだ。君にも、誰にも縋りたくない。光の一筋を手繰り寄せて手繰り寄せて、少しずつ、私は私になっていく。